好調が続くインド株式市場
「インド株式」といっても、日本で暮らす私たちにとってはなじみが薄いかもしれません。インドという国に対しても、「人口が多い」「IT産業が強い」といった漠然としたイメージにとどまる方も多いでしょう。
そんなインドの株式市場は、GDPの伸びとともに近年力強い成長を続けてきました。2024年6月末時点での過去20年間の株価の動きを見ると、インドを代表する株価指数であるNifty50は、日本(TOPIX)や米国(S&P500)を大きく超える上昇となっています。

※インド名目GDP:2004年4月~2027年3月、2024年4月以降はIMF見通し。
※インド名目GDPは年度(4月~翌年3月)ベースで算出。
(出所)IMF「World Economic Outlook Database April 2024」、ブルームバーグより大和アセットマネジメント作成
インドのGDPは2027年に世界第3位へ
いまやインドは世界屈指の経済大国です。国の経済の規模を表す名目GDP(国内総生産)は、2023年末時点では世界第5位。そして2027年には日本とドイツを抜いて、米国と中国に次ぐ世界第3位になると予測されています。
主要国の中でも相対的に高いGDP成長率
インドは今後も高い経済成長が見込まれています。IMF(国際通貨基金)の見通しによると、2025年~2029年の5年間における実質GDP(物価変動の影響を除いたGDP)の成長率は年平均6.5%。これは日本や米国などの先進国だけでなく、中国や世界全体の水準を大きく上回ります。
主要国の実質GDP成長率の見通し(2025年~2029年の年平均)

インドの一人当たりGDPは1971年頃の日本と同水準
「一人当たりGDP」はGDPを国の人口で割った値で、その国の豊かさを表す指標として用いられます。インドの2022年末時点での一人当たり名目GDPは、過去の日本に当てはめると、1971年頃と同じ水準です。
その後の日本の経済成長を鑑みると、インドもかつての日本と同様に、今後の成長余地は大きいと見ることができます。
インドと日本の一人当たり名目GDP

※インド、中国、韓国の2022年の一人当たり名目GDPは、それぞれ1971年、1985年、1992年の日本との近似値を示しています。
※インドの2022年の一人当たり名目GDPはIMF見通し。
※日本の一人当たり名目GDPは、1979年までは内閣府、1980年以降はIMFのデータを使用しています。
(出所)IMF「World Economic Outlook Database April 2024」、内閣府
世界一の人口が支える生産と消費の拡大
インド株式市場の成長を支えるのが、14億人を超える人口です。インドの人口は2023年に中国を抜いて、世界一の人口大国となりました。現在では人口減少に転じている中国などとは対照的に、インドの人口は2050年頃まで増え続けることが予測されています。
主要国の人口の推移

※国連推計値、2022年以降見通し。
(出所)国際連合「World Population Prospects The 2022 Revision」
インドは単に人口が多いだけではありません。インドの魅力は、人口の「若さ」にあります。
生産年齢人口=「働き手」の比率が高いインド
生産年齢人口とは15歳~64歳の人口のことで、社会における働き手として、生産に携わる人口です。インドの年齢別人口比率構成のグラフを見ると、少子高齢化が進む日本とは対照的にインドには若い人が多いことがわかります。インドでは、当面は生産年齢人口の占める割合が高い、「人口ボーナス」と呼ばれる時期が続くと考えられています。
インドの年齢別人口比率構成(2021年)

※国連推計値。
(出所)国際連合「World Population Prospects The 2022 Revision」
消費市場の拡大もインド経済の追い風に
インドでは、購買力が旺盛な年間可処分所得が15,000米ドル以上の世帯の大幅な増加が見込まれており、インドの消費市場の拡大が今後加速することが期待されています。
インドの所得別世帯数の推移(見通し)

高所得者層:年間世帯可処分所得が35,000米ドル以上
上位中間層:年間世帯可処分所得が15,000米ドル以上35,000米ドル未満
下位中間層:年間世帯可処分所得が5,000米ドル以上15,000米ドル未満
低所得者層:年間世帯可処分所得が5,000米ドル未満
(出所)ブルームバーグ、ジェトロ
インドの新車販売台数は世界3位
インドにおける消費拡大を示す例として、新車販売台数の増加が挙げられます。2020年時点では世界第5位でしたが、2023年には日本を抜いて、中国と米国に次ぐ世界3位となりました。
世界の新車販売台数ランキング

インフラ投資の推進でインドの経済成長を後押し
インドでは生産年齢人口と中間層の増加により、生産と消費の拡大が期待できる一方で、インフラ整備の遅れが経済成長の阻害要因となっていました。この問題を解消すべく、インド政府は国家戦略としてインフラ投資を推進しています。
インフラ投資額は、2020年から2030年にかけて約1.6倍に増えると推測されています。インフラが整うことでインドのビジネスが活性化し、さらなる高成長への基盤となることが期待されます。
インドの年間インフラ投資額の推移(推計値)

(出所)Global Infrastructure Hub(https://outlook.gihub.org/)(2024年1月取得)、インド財務省2022/23年度・2023/24年度予算案
2025年度までに開始の主な大型インフラ関連投資政策
高速 | 高速道路ネットワークを25,000km建設 |
貨物 | 100の貨物ターミナルを整備 |
航空 | 50の空港、ヘリポート、水上飛行場等を建設 |
電車 | 1,000両の新型電車を導入 |
運輸 | 100件の運輸インフラプロジェクトを実施 |
ムンバイ湾岸高速道路プロジェクト

ムンバイ西部の海岸線に沿って、全長29.2km、8車線の高速道路の建設が進められています。毎日13万台の車両が利用すると予測されており、南ムンバイと西部郊外の間の移動時間は従来の約2時間から、40分程度に短縮されると期待されています。
インドを代表する企業は?
インドにはどのような企業があるのでしょうか?インド株式市場をけん引する企業の一例を紹介します。
リライアンス・インダストリーズ
「インド三大財閥」といわれる財閥の1つがリライアンス・グループです。同グループの企業であるリライアンス・インダストリーズは、インドを拠点に石油化学や繊維事業を展開しています。2020年には、インド企業として史上初めて時価総額が2,000億ドルを突破しました。
HDFC銀行
インド全土に7,800以上の支店網を持つ、インド最大の民間銀行です。中・高所得層の個人および法人を対象とした融資や資産運用サービス、さらには投資銀行業務など、幅広い金融サービスを提供しています。
インフォシス
インドを代表するIT企業の1社。近年のインドはIT人材を多数輩出しており、米国のIT業界でもインド出身の人材が数多く活躍しています。インフォシスはインド南部ベンガルールを拠点として、ITコンサルティングやソフトウェア開発などを営んでいます。
マルチ・スズキ
日本の自動車メーカー、スズキの子会社。スズキがインドに進出したのは1982年で、当時は年間販売台数3万台と非常に小さかったインドの自動車市場を開拓してきました。現在はインド国内でトップシェアを誇り、2023年度には国内外の販売台数が初めて200万台を突破しました。
※上記の銘柄・企業名についてはあくまでも参考として紹介したものであり、当該銘柄等の売買を推奨するものではありません。
インド株式に投資する方法は?
インド企業の個別株式に、日本に住む個人投資家が直接投資することはできません。インド国内の金融商品取引所のルールにより、外国人投資家に対して制限がかけられているためです。
インド株投資には公募投資信託やETFを活用
個人投資家がインド株式に投資する方法は、公募投資信託か、ETFのいずれかが一般的です。東証ETFであれば、個別株式を取り扱うすべての証券会社で購入できます。
公募投資信託には、市場平均に連動する値動きを目指す「インデックス型」と、市場平均を上回る成果を目指す「アクティブ型」の2種類があります。インデックス型の投資信託が連動を目指す、インド株式の代表的な株価指数には「S&P BSE SENSEX」や「Nifty50」などがあります。
東証ETFは、2024年8月時点ではインド株式を対象とする商品が4本上場しています。そのすべてがインデックス型で、うち3本はNifty50への連動を目指して運用を行っています。
インドを代表する株価指数「Nifty50」
インドの主な株式市場には「ボンベイ株式取引所」「ナショナル証券取引所」「カルカッタ証券取引所」があります。Nifty50は、ナショナル証券取引所に上場する代表的な50銘柄で構成される株価指数です。
Nifty50の上位組み入れ銘柄(2024年6月末時点)
銘柄名 | 業種名 | 比率 |
---|---|---|
HDFC銀行 | 金融 | 11.95% |
リライアンス・インダストリーズ | エネルギー | 9.98% |
ICICI銀行 | 金融 | 7.95% |
インフォシス | 情報技術 | 5.33% |
ラーセン&トゥブロ | 資本財・サービス | 3.91% |
インドの現物株に投資する「iFreeETF インドNifty50」
Nifty50への連動を目指すETFとして、「iFreeETF インドNifty50」(銘柄コード:233A)が2024年8月に上場しました。
「iFreeETF インドNifty50」は、インドの現物株に投資する国内初のETFです(2024年7月末現在、大和アセットマネジメント調べ)。
インドでは、株式の売却益は課税対象となります。そのため、従来のインド株式のETFは、課税によるコストを避けるために、現物株ではなく株価指数先物を投資対象としていました。しかし、株価指数先物は株価指数との間に乖離が生じやすく、ETFのパフォーマンスは指数に対して劣後しやすい状況にありました。
「iFreeETF インドNifty50」は、現物株への投資割合を高位に保つことで対象指数であるNifty50との乖離を抑えつつ、ETFに対する日々の資金流出入については株価指数先物を活用することで課税によるコストを抑制するといった運用を行っています。
このように、現物株に投資しながら株価指数先物を活用するという“ベストミックス”の運用によって、株価指数との連動性がより高まるうえ、現物株から得られる配当収入にも期待できるのが「iFreeETF インドNifty50」の特徴です。
インド株投資の注意点は?
インド株式は、インドの経済成長とともに長期的な成長が期待できる資産である一方で、注意すべきことがあります。1つは為替の影響を受けることです。円高が進んでインドルピーが安くなれば、インド株式の投資信託やETFにとっては下落要因になります。
もう1つは「カントリーリスク」と呼ばれる、政治・経済情勢の変化です。周辺国との関係悪化など、政治情勢が不安定化すると株価の下落要因となるので、政治の動向にも注意する必要があります。
まとめ
インドのGDPは年平均6.5%の高成長が見込まれており、中間層の増加による消費の拡大が経済成長を後押しすることが期待されます。インド政府はインフラ投資を積極的に推し進め、さらなる経済成長への土台を築いています。こうした背景もあり、インド株式は長期的な上昇傾向にあります。
個人投資家がインド株式に投資する主な方法には公募投資信託とETFがあり、2024年8月にはインドの現物株に投資する国内初のETF「iFreeETF インドNifty50」が上場しました。
インド株式をご自身のポートフォリオに組み入れることで、インドの持続的な経済成長の果実を資産形成に取り込んでみるのも良いかと思います。